子ども時代の記憶の中で、「カバヤ児童文庫」という固有名詞は懐かしい思い出です。
カバヤ児童文庫は一箱10円の「カバヤキャラメル」についていたおまけのカードを
たしか5枚集めるともらえたＢ6判内外の名作物語のダイジェスト版です。

調べてみたら、1952年〜54年にかけて、全部で195冊（現在はカバヤ食品株式
会社の所在地だった岡山県立図書館のホームページで書誌情報を知をることができる）
が刊行されたそうです。
それは、ぼくが小学3・4年生のころで、一時夢中になってカバヤキャラメルを
買った覚えがあります。

当時、静岡の駒形3丁目というところに住んでいて、
カバヤ児童文庫を交換してくれる場所は浅間神社の近くの商店街にありました。
どの辺りだったか、具体的には覚えていません。
ただに忘れられないのは、その店（お菓子問屋だったのではないか）の横にある狭い
廊下の突き当りにある部屋で、棚にはカバヤ児童文庫がいっぱい並んでいました。
そこから好きな本を選ぶことができたのです。
しかし、情けないことに、その本のタイトルや内容はあまり覚えていないのです。
だから、ぼくの「カバヤ児童文庫」の記憶は、その本の内容ではなく、交換の場所と
そこの雰囲気の記憶なのです。
ぼくは根っからの文学少年ではなかったのかもしれません。
読むよりも、集めることに夢中だったのです。
1950年には岩波少年文庫がすでに刊行開始されていたのですが、
ぼくはそれを一冊も読んだ記憶がないのです。
だから、ぼくの読書の初体験は「カバヤ児童文庫」では
なかったのかと、密かに思ったりもするのです。

ここに掲載した「カバヤ児童文庫」は、浜松の古書の市場で落札したものです。
これまでも市場で落札した本の中や、買い取りの中に数冊混じっていたことはあったが、
今回のようにまとまって40冊余も目にしたのは初めてで、
思わず落札してしまいました。